映画『DOGMAN』が描く衝撃:リュック・ベッソンが放つ孤独な男と犬たちの絆

映画『DOGMAN』が描く衝撃:リュック・ベッソンが放つ孤独な男と犬たちの絆

リュック・ベッソン監督の最新作『DOGMAN』は、『レオン』以来となる彼の鋭い視点が光るバイオレンスアクション映画です。実際の事件にインスパイアされ、孤独な男と彼を支える犬たちの絆を中心に展開するこの作品は、観る者の心を強く揺さぶります。主演のケイレブ・ランドリー・ジョーンズが演じるダグラスは、幼少期に犬小屋に閉じ込められ、虐待を受けながら育ちました。彼の孤独を癒し、支えてきたのは犬たちの存在です。犬たちはダグラスにとって単なるペットではなく、家族であり、彼の唯一の味方でした。

ダグラスと犬たちの絆

映画は、傷つきながらも犬たちと共に生きるダグラスの半生を描きます。彼のトラックには、多くの犬が乗っており、それぞれがダグラスの過去と現在を象徴する存在です。ベルジアン・シェパードドッグ・マリノア、ジャック・ラッセル・テリア、ボーダーテリア、ウルフハンド、サルーキ、ドーベルマンなど、多様な犬種が登場し、それぞれがダグラスとの特別な絆を築いています。主人公が経験した裏切りや暴力の中で、犬たちの無条件の愛は彼にとって唯一の救いでした。

「ここまで多くの種類が登場し、そして様々な個性を持っていることは想定していなかった…。複雑なトレーニングが必要な一方で時間にも限りがあり、それでも監督は私に任せてくれた」そう語るのは本作に参加した、ハリウッドで長年仕事をしてきたドッグトレーナーのマチルド・ドゥ・カグニー。

映画撮影での高度なトレーニング

『DOGMAN』の撮影には、犬たちのリアリティを追求するために、さまざまな専門的なトレーニングが行われました。マチルド・ドゥ・カグニー率いるドッグトレーナーチームは、犬たちが映画の中で安全かつ正確に役割を果たせるよう、“バイト・トレーニング”や“ドッグ・リリース”といった高度な訓練を施しました。

“バイト・トレーニング”は、犬が特定の指示に従って噛む力を調整する訓練であり、緊急時に適切な行動を取るために行われます。犬たちはこの訓練を通じて、攻撃と防御のタイミングを学び、ダグラスを守るためにそのスキルを発揮します。

“ドッグ・リリース”は、犬が攻撃態勢からすぐに引き下がる能力を養う訓練で、これにより犬は冷静さを保ち、主人公を守る役割を果たします。

日本では、これらの高度なトレーニングは主に警察犬やセキュリティ犬に使用されており、一般の家庭犬にはあまり適用されていません。しかし、ドッグスポーツや行動修正の分野では徐々に注目されつつあり、犬の行動学に基づいた訓練が一部のトレーナーや愛犬家の間で広まりつつあります。日本の犬文化では、犬との穏やかな関係を重視する傾向が強く、攻撃的な行動を抑えるための社会化トレーニングが一般的です。

犬が噛み付いた際の顎の力をコントロールさせる“バイト・トレーニング”の専門家も撮影に参加した。専門家ソファーヌ・タレフェは「俳優が大声を出したり、歌ったり、激しい動きをしても犬たちが驚かないようにしなければならなかった」と撮影での苦労した点を話す。

犬たちの生存と人間社会の対比

『DOGMAN』のもう一つの特徴は、多くの人間キャラクターが暴力的な運命を辿る一方で、犬たちは一頭も死ぬことがない点です。これは、ダグラスにとって犬たちがどれほど大切な存在であるかを象徴しています。彼らはダグラスの孤独を癒し、裏切りの多い人間社会における唯一の安心感を与えてくれる存在です。映画を通して描かれるのは、人間の残酷さと犬たちの無償の愛の対比であり、ダグラスが求める真実の愛と信頼が犬たちとの絆に凝縮されています。

リュック・ベッソン監督版のバッドマンとも言えるダグラスの物語は、彼が社会の中で見つけられなかった愛と理解を犬たちの中に見出す姿を描いています。『DOGMAN』は、観る者に愛と暴力、孤独と希望の複雑な感情を考えさせる深い作品です。ベッソン監督の独特な視点が生かされたこの映画は、愛する犬たちと共に生きることの意味を問いかけ、忘れがたい印象を残します。

【STORY】
ある夜、警察に止められた一台のトラック。運転席には負傷し、女装をした男。荷台には十数匹の犬。“ドッグマン”と呼ばれるその男は、半生を語り始めた―。
犬小屋で育てられ暴力が全てだった少年時代。トラウマを抱えながらも、犬たちに救われ成長していく中で恋をし、世間に馴染もうとするが、人に裏切られ、苦しめられ、深く傷ついていく。
犬たちの愛に何度も助けられてきた男は、絶望的な人生を受け入れ、生きていくため、犬たちと共に犯罪に手を染めてゆくが、“死刑執行人”と呼ばれるギャングに目を付けられ― 映画史に刻まれる愛と暴力の切なくも壮絶な人生に圧倒される!

【CAST&STAFF】
脚本・監督︓リュック・ベッソン
出演︓ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ

2023|フランス|カラー|シネマスコープ|5.1ch||英語・スペイン語|PG12|日本語字幕:横井和子|原題:DOGMAN|配給:クロックワークス

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仙石 健一郎
Shopify Admin
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1979年 宮城県仙台市出身|ドッグアパレル&アーカイヴサポートマガジン【CUUN】 編集長(2010~)|特定非営利活動法人JAZZY DOG LIFE 理事(2024~)|仙台ECO動物海洋専門学校 エコテクノロジー科 ペットマネジメント&ホスピタリティ専攻 講師(2024~)|ドッグカルチャークリエイター/ペットイベントプランナー|JKC愛犬飼育管理士|ミッション<犬生と人生の記憶を記録として保存する>