犬猫マイクロチップの普及は本当に必要?日本と世界の現状を検証

犬猫マイクロチップの普及は本当に必要?日本と世界の現状を検証

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東京都発表「犬及び猫へのマイクロチップ装着・登録状況」調査結果:普及が進まない実態とは?

2025年2月、東京都が発表した「犬及び猫へのマイクロチップ装着・登録状況」の調査結果によると、ペットの身元確認手段としてのマイクロチップの普及が進んでいない現状が明らかになりました。

調査対象の57人のうち、約50.9%が「マイクロチップを装着していない」と回答し、さらに8.8%は「装着しているが登録していない」と答えました。

マイクロチップは「迷子や盗難時の識別に役立つ」とされるものの、装着率の低さからその効果が疑問視されます。さらに、「体内に異物を埋め込むことがペットの安全や福祉の観点から最適な選択肢なのか?」という根本的な疑問も残ります。

本記事では、日本におけるマイクロチップの普及状況を世界と比較し、本当に唯一の解決策なのかを再考します。


世界の犬猫マイクロチップ事情:義務化=完全普及ではない?

イギリス:義務化されても登録率に課題あり

イギリスでは2016年4月6日から、全ての犬にマイクロチップの装着が義務付けられています。違反した場合、最大500ポンド(約9万円)の罰金が科せられます。(UK Government)

しかし、義務化=完全普及ではありません。罰則があるため装着率は向上していますが、登録されていないチップが多数存在し、運用面での課題が指摘されています。

フランス:タトゥー識別は過去のもの、現在はマイクロチップのみ

フランスでは2011年7月3日以降に生まれた犬や猫にマイクロチップ装着が義務化されています。(jp.ambafrance.org)以前はタトゥー(入れ墨)による識別も認められていましたが、現在ではマイクロチップが唯一の公式識別方法となっています。

アメリカ:義務化されていない州が多く、普及率は約58%

アメリカでは連邦レベルでのマイクロチップ義務化はなく、州ごとに規制が異なります。一部の州(カリフォルニア州など)では、ペットショップで販売される犬や猫にマイクロチップ装着が義務付けられていますが、全国的な装着率は約58%に留まっています。(American Veterinary Medical Association)

義務化されていない地域では装着率が低く、全米での普及率はまだ十分とは言えません。


日本のマイクロチップ普及の遅れと課題

日本では、2022年6月1日から、ペットショップやブリーダーに対しマイクロチップ装着と所有者情報の登録が義務化されました。しかし、一般の飼い主に対しては「努力義務」にとどまり、装着率の向上には至っていません。(環境省)

東京都の最新調査でも、装着率が50%未満であることが判明し、さらに登録されていないチップの割合も高いことがわかりました。背景には、「体内に異物を埋め込むこと」への抵抗感があると考えられます。

追記)2025/02/22

一方で、CUUN読者を対象としたアンケート調査では、装着率が83%に達していることが分かりました。これは、東京都の調査(57人対象)とほぼ同規模(58人対象)であり、対象者の違いによる装着率の差が顕著に表れています。

この結果を考察すると、ペットのファッションやライフスタイルに関心の高いCUUN読者層では、マイクロチップを積極的に受け入れる傾向が強いことがうかがえます。一方で、東京都の調査対象者の多くは、マイクロチップ装着に慎重な考えを持っている可能性があります。

重要なのは、マイクロチップの装着が単なる義務ではなく、飼い主それぞれの価値観や飼育スタイルによって判断されるべきものであるということです。装着することで安心感を得る飼い主もいれば、他の方法(GPS付き首輪、迷子札など)を活用しながら、ペットの安全を守ろうとする飼い主もいます。

この比較から言えるのは、マイクロチップの装着率は単に高い・低いで評価すべきものではなく、それぞれの選択の背景にある価値観を尊重することが大切であるということです。どちらの選択をするにしても、最も重要なのはペットの安全と快適な生活を守るために、飼い主が最適な方法を選ぶことです。


マイクロチップの装着部位と痛みについて

マイクロチップは、通常「首の後ろ(肩甲骨の間)」の皮下に挿入されます。この部位が選ばれる理由として、以下の点が挙げられます。

安定しやすい
首の後ろは動きが少なく、マイクロチップが移動しにくい
挿入が容易
獣医師が適切に挿入しやすい
読み取りがスムーズ
専用リーダーでスキャンしやすい位置

ただし、まれにチップが移動することがあり、スキャン時に異なる位置を探す必要があるケースも報告されています。

また、マイクロチップの挿入時には太めの注射針を使用するため、一時的な痛みを感じることがあります

麻酔なしでも装着可能
一般的には局所麻酔なしで挿入できるが、痛みを感じるペットもいる
人間の予防接種程度の痛み
チップ挿入時の痛みは短時間で終わる
装着後はほぼ無痛
まれに炎症が起きる場合があるが、大半のペットは気にしない

痛みの感じ方には個体差があり、敏感なペットは挿入時に驚いたりすることもあります。しかし、一度装着してしまえば通常の生活に支障はなく、ほとんどのペットは気にしないと報告されています。


マイクロチップの問題点

GPS機能がない
➡ リアルタイムでペットの居場所を追跡することは不可能

健康リスクの懸念
➡ 炎症、アレルギー、チップの移動、腫瘍のリスクが報告されている(American Veterinary Medical Association)

登録しなければ意味がない
➡ マイクロチップを装着しても、飼い主が登録しなければ機能しない

迷子対策として有効とされるマイクロチップですが、保護された際に専用リーダーで読み取られなければ役に立たないのが現実です。


代替手段はあるのか?

マイクロチップ以外にも、ペットの身元確認や迷子対策の選択肢は存在します。

GPS付きスマートタグ
➡ 首輪に装着し、リアルタイムでペットの居場所を追跡可能

QRコード付きタグ
➡ 迷子になった際、スマホでスキャンするだけで身元確認が可能

鼻紋認証(韓国・日本)
➡ スマートフォンで鼻紋をスキャンすることで個体識別(精度99%)

特に韓国の「Petnow」は、AI技術を活用し、スマホで鼻紋を撮影することでペットの識別を可能にしました。日本でも「NoseID」などの技術が開発され、迷子犬の識別や保護活動に活用されています。(S’more)


結論:「体に埋め込む」時代は終わりつつある?

マイクロチップ義務化が進む国でも、装着率は100%には達していない
GPS機能がなく、リアルタイム追跡は不可能
鼻紋認証技術の発展により、非侵襲的な識別方法が実用化

迷子対策のために「体に異物を埋め込む」ことが最善の手段なのか? ペットの安全を守るためには、より実用的で負担の少ない選択肢を検討すべきではないでしょうか。

今こそ、新しい識別技術を積極的に取り入れる時代へと移行すべきです。

 


みなさまのお考えをぜひ聞かせてください!

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。本記事では、マイクロチップの普及状況や課題について多角的に考察しましたが、皆さんのご意見もぜひお聞かせください。

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6件のコメント

コメントいただきありがとうございます。マイクロチップに関する不安や問題点について、貴重なご意見をお聞かせいただきました。

確かに、マイクロチップの挿入や管理には慎重な対応が求められます。特に小型犬にとって、体のサイズに対してチップの大きさが適しているのか、また、挿入時のリスクについては多くの飼い主が気にされる部分だと思います。挿入ミスによる健康被害の例があることは事実であり、事前に獣医師と相談し、適切な対応を取ることが重要ですね。

また、マイクロチップが本来の目的である「迷子対策」や「盗難防止」として機能する一方で、名義変更の問題や、愛護団体による管理の不透明さなど、運用面での課題も存在することは否めません。ご指摘のように、ペットショップやブリーダーには義務化されているのに対し、愛護団体には同様の義務が課せられていない点は、公平性の観点からも議論されるべき課題だと思います。

マイクロチップにはメリットもありますが、その運用が適切に行われなければ、飼い主やペットにとって負担になることも事実です。そのため、マイクロチップが本当にすべてのペットにとって最善の方法なのか、また、より安全で公平な運用が可能な仕組みが整えられるのか、今後の改善が求められる点については、私たちも引き続き考えていきたいと思います。

貴重なご意見をありがとうございました。

CUUN編集長 仙石

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仙石 健一郎
Shopify Admin
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1979年 宮城県仙台市出身|ドッグアパレル&アーカイヴサポートマガジン【CUUN】 編集長(2010~)|特定非営利活動法人JAZZY DOG LIFE 理事(2024~)|仙台ECO動物海洋専門学校 エコテクノロジー科 ペットマネジメント&ホスピタリティ専攻 講師(2024~)|ドッグカルチャークリエイター/ペットイベントプランナー|JKC愛犬飼育管理士|ミッション<犬生と人生の記憶を記録として保存する>